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東京地方裁判所 平成10年(ワ)20088号 判決 1999年6月25日

東京都渋谷区代々木五丁目五九番五号

原告

財団法人消費者教育支援センター

右代表者理事

宇野政雄

右訴訟代理人弁護士

志々目昌史

井上展成

東京都世田谷区祖師谷一丁目一四番六号

被告

豊澤豊雄

東京都新宿区西新宿二丁目六番一号

被告

株式会社騎虎書房

右代表者清算人

田中米藏

右訴訟代理人弁護士

本橋光一郎

小川昌宏

下田俊夫

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して金五〇万円及びこれに対する平成一〇年五月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告らは、原告に対し、連帯して金二〇〇万円及びこれに対する平成一〇年五月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告に対し、株式会社朝日新聞社東京本社発行の朝日新聞の全国版朝刊社会面に、別紙謝罪広告目録の「一 体裁」の項記載のとおりの体裁で、同目録の「二 広告文」の項記載のとおりの広告を一回掲載せよ。

第二  事案の概要

本件は、被告豊澤豊雄(以下「被告豊澤」という。)が執筆し、被告株式会社騎虎書房(以下「被告会社」という。)が発行した書籍が、原告の著作権及び同一性保持権を侵害すると主張して、原告が被告らに対し、損害賠償の支払及び謝罪広告を求めた事案である。

一  前提となる事実(証拠を示した事実以外は、当事者間に争いがない。)

1  原告の著作物

原告は、「学校教育と知的財産権~教材作成委員会」を設置し、平成九年、<1>「大事にしようあなたの創意」と題する冊子(以下「原告冊子一」という。)、<2>「きみが創りきみが守る」と題する冊子(以下「原告冊子二」といい、原告冊子一とあわせて「原告冊子」という。)を製作し、発行した。原告は、原告冊子の著作者(法人著作者)であり、これらにつき著作権及び同一性保持権を有する。(甲一、二)

原告冊子一には、別紙対照目録(一)ないし(八)の各A部分のとおりの記載(以下、各記載部分を順に「原告冊子一(一)」ないし「原告冊子一(八)」という。)が、原告冊子二には、同目録(一)ないし(八)の各B部分のとおりの記載(以下、各記載部分を順に「原告冊子二(一)」ないし「原告冊子二(八)」という。)がある(甲一、二)。

2  被告らの行為

被告豊澤は、「中学生にもわかる著作権」と題する書籍(以下「被告書籍」という。)を執筆し、被告会社は、平成一〇年一月二九日付けで被告書籍を発行した(被告豊澤との関係で、甲三)。

被告書籍には、別紙対照目録(一)ないし(八)の各C部分のとおりの記載(以下、各記載部分を順に「被告書籍(一)」ないし「被告書籍(八)」という。)がある(甲三)。

二  争点

1  被告らは原告冊子に係る原告の著作権(複製権、翻案権)及び同一性保持権を侵害したか。

(原告の主張)

被告豊澤は、原告に無断で、原告冊子の中の図表を転載し、漫画の部分については、そのストーリーを用いて小説風の文章にして、これを翻案したものである。被告書籍と原告冊子との具体的な対比は、別紙対照目録記載のとおりである。

よって、被告らの行為は、原告冊子に係る原告の著作権(複製権、翻案権)及び同一性保持権を侵害する。

(被告豊澤の反論)

(一) 被告豊澤は、原告冊子一に関する質問等が来たため、これに対する回答のマニュアルの作成を第三者に依頼し、出来上がった原稿を修正して被告書籍を執筆した。被告豊澤は原告冊子に依拠して執筆したのではない。

(二) 原告冊子は、これまでに多くの人が使ったストーリーを漫画化したものであり、原告冊子の創作性の範囲は非常に狭い。したがって、その表現が少しでも異なれば、著作権侵害には当たらない。被告書籍における表現は原告冊子の表現とは異なり、被告書籍の発行は原告の著作権を侵害するものではない。

2  被告会社に、著作権及び同一性保持権の侵害につき故意、過失があったか。

(原告の主張)

被告会社には、原告の著作権及び同一性保持権の侵害につき、故意、過失があった。

(被告会社の反論)

平成九年一〇月ころ、被告豊澤から被告会社に対し、被告書籍の出版企画が持ち込まれた。被告会社が、被告豊澤から原稿を受け取り、目を通したところ、原告冊子一について言及されていたため、被告豊澤に確認したが、同被告より著作権上の問題はない旨の回答があった。被告会社は、著作権等について多数の著書を執筆している専門家である被告豊澤の回答を尊重して、被告書籍を出版したので、被告会社には、原告の著作権等の侵害につき、故意、過失はない。

3  損害額はいくらか。

(原告の主張)

原告冊子一の定価は一〇〇円、原告冊子二の定価は一八〇円である。被告書籍は一万冊程度出荷されたと考えられる。被告書籍は、原告冊子の主要部分のほとんどについて翻案、転載したものであるから、原告冊子一及び二の平均価格一四〇円に被告書籍出庫数一万冊を乗じた額一四〇万円が、被告らの著作権侵害行為により原告が受けた損害であると考えられるところ、本件ではそのうちの一〇〇万円について請求する。

また、被告らは、原告の同一性保持権を侵害し、原告の社会的名誉、声望を著しく毀損したものであり、これに対する慰藉料ないし無形の損害に対する賠償金としては、一〇〇万円が相当である。

よって、原告は、被告らに対し、連帯して損害賠償金合計二〇〇万円及びこれに対する侵害行為の後の日である平成一〇年五月一日から支払済みまで年五分の遅延損害金の支払を求める。

4  謝罪広告の必要性が認められるか。

(原告の主張)

原告は、消費者教育の総合的かつ効果的な推進を支援することを目的とする公益的な財団法人である。被告豊澤は、社団法人発明学会を主宰し、その関連団体である株式会社知的所有権協会とともに、著作権を株式会社知的所有権協会に登録することによりアイデアが保護されるという、誤解を与える営業を営んでいる。同被告は、右発明学会が発行する機関誌等に原告冊子一を紹介して、文化庁が被告豊澤らと歩調を合わせているかのような行動をしている。

被告会社は、被告豊澤の活動内容等を承知しており、被告書籍の他にも被告豊澤執筆の書籍を発行して、結果的に被告豊澤の活動を助長している。

このような経緯に照らすと、本件侵害行為により、原告の社会的名誉、声望は著しく毀損されたものと解すべきであり、これを回復するためには謝罪広告を掲載する必要がある。

(被告会社の反論)

平成一〇年三月末ころ、原告より被告会社に対し、同被告の行為が原告の著作権等を侵害するとして、被告書籍の頒布中止等を求める旨の通知が届いた。被告会社は、同年四月初旬ころ、社内的に検討の上、被告書籍の販売を中止することを決定し、新たな配本を停止する措置を採った。その後も、被告会社は原告と折衝を続け、誠意をもって解決すべく努力してきた。よって、被告会社については、謝罪広告は不相当である。

第三  争点に対する判断

一  争点1(著作権侵害、同一性保持権侵害)について

1(一)  原告冊子一と原告冊子二とは、著作物の内容が相互に類似ないし重複している。そこで、以下において、原告冊子一を中心に検討し、必要に応じて原告冊子二を検討する。

原告冊子一は、中学校を舞台としたストーリー性のある漫画であり、解説文及び図形等を用いて、中学生向けに、著作権思想に関する啓発を目的とした小冊子であり、三六頁(表紙を含む)からなる。原告冊子一には、末尾に、知的所有権クイズや問い合わせ先一覧等が掲載されている。(甲一)

原告が著作権侵害を主張する部分は、以下のとおりである。

原告冊子一(一) 後記<1>及び<6>の最終頁

同(二)     後記<5>の冒頭二頁

同(三)     後記<2>の最終二頁

同(四)     後記<3>の冒頭三頁

同(五)     後記<3>の最終頁

同(六)     後記<6>

同(七)     後記<4>

同(八)     末尾の問い合わせ先一覧表

原告冊子一のストーリーの概要は、以下のとおりである。

<1> 「無断コピーはおことわり」

右は、学校祭のポスターに、生徒の一人が、自分が描いたウサギの絵とそっくりなウサギの絵が描かれているのを発見し、別の生徒が著作権侵害ではないかと言い出すが、生徒たちには、生徒が描いた絵に著作権があるかどうかが分からない場面、教室で、生徒たちが、無断コピーの是非、それがなぜいけないのかについて話し合っている場面、ポスターの前で、絵を真似された生徒が、勝手に人の作品を使うこと自体が問題なのだと訴えている場面等から構成されている。なお、知的所有権に関する短文の解説が付記されている。

<2> 「著作権は死後50年まである」

右は、生徒が、真似されたポスターの絵に関して、顧問の先生に相談し、その結果、学校祭の実行委員会が検討することになる場面、他方、生徒たちの間では、クラスの学校祭の出し物として、のど自慢やレコード屋という提案が出されるが、レコード等を無断コピーしようという話が出たため、生徒の一人が、作者が亡くなって五〇年たたないと、その作品を勝手に使えないと聞いたことがあると説明する場面等から構成されている。なお、著作権の保護期間に関する短文の解説が付記されている。

<3> 「みんながやっていればいいのか」

右は、生徒二人が、無断でコンサートをビデオに録画して売るのはいけないという話をしている場面、生徒たちが、パソコンのゲームのソフトを勝手にインストールすることも、著作権侵害になるという話をしている場面、生徒たちの間で、コピー屋や貸しビデオ店などが著作権法上問題がないのか疑問が生じ、クラスで知的所有権を調べて、学校祭で発表することになる場面等から構成されている。なお、著作権や著作隣接権に関する短文の解説及び知的所有権に含まれる権利について、樹木の枝状に現した説明図が付記されている。

<4> 「にせブランド品の持ち込み」

右は、生徒の一人の叔母が、海外旅行で買った偽ブランド品を、入国の際に没収されたという話から、生徒たちが、なぜ没収されたのか図書室で調べることになる場面、そして、偽ブランドは商標権の侵害になるので、関税定率法により輸入差止めを受けるということが分かる場面等から構成されている。なお、偽ブランド品に関する短文の解説及び偽ブランド品の輸入差止めに関するグラフ等が付記されている。

<5> 「学校でのコピーは?」

右は、図書室でコピーをしている生徒たちが、私的使用や授業で使うためのコピーはよいが、会社や業者がコピーする場合には著作権者の使用許諾が必要であると話している場面、生徒たちが、帰り道に、ソフトの無断インストールはできないと話している場面等から構成されている。なお、本、雑誌及びコンピュータ・プログラムのコピーに関する短文の解説が付記されている。

<6> 「他人の権利を尊重しよう」

右は、生徒たちが図書室で調べものをしながら、デジタル方式のテープやディスクの値段には著作権料が含まれているという話をしている場面、そこへ先生が来て、音楽の場合の著作権と著作隣接権、同一性保持権について説明する場面、生徒たちは、他人の権利を大切にしなければならないという話をする場面、その後、職員室で、先生が前記ポスターに絵を使われた生徒に対し、実行委員会が謝罪して、右生徒の絵を利用したことを明記することになったと伝え、生徒は了解する場面等から構成されている。なお、著作隣接権と著作者人格権に関する短文の解説が付記されている。

(二)(1)  被告書籍は、一四章からなる二〇五頁の書籍である。

このうち、被告書籍(一)ないし(四)、(六)及び(七)は、中学校を舞台に、登場人物の会話を多用した、著作権思想の啓発を目的とする小説風の読み物であり、また、被告書籍(五)は、知的財産権に含まれる権利について、樹木の枝状に現した説明図である。

原告が著作権侵害を主張する部分は、以下のとおりである。

被告書籍(一) 第1章「(1)キャラクターの無断コピーは違法?」の一部

被告書籍(二) 第1章「(2)コピーしていいものは何か?」の一部

被告書籍(三) 第2章「著作権はいつまで有効なのか?権利期間はいつまでなのか?」の一部

被告書籍(五) 第3章「(1)著作権に準じた権利とは」中の説明図

被告書籍(六) 第3章「(2)勝手に変えてはいけない権利とは」の一部

被告書籍(七) 第4章「ブランド品にかかわる著作権 みやげの品が没収された!?」の一部

(2)  被告書籍(一)は、生徒が、学校祭の立て看板に、自分が描いたパンダの絵とそっくりな絵が描かれているのを発見し、別の生徒が著作権侵害ではないかと言い出す場面、生徒たちが、コンピュータ・ソフトを無断でコピーして販売した人が逮捕された事件を題材に、無断コピーの是非について話し合う場面、先生が、無断コピーがなぜ違法なのかを説明する場面、先生が前記立て看板に絵を使われた生徒に対し、委員会が改めて生徒の了解を得て、絵を利用したことを明記することにすると伝え、生徒は了解する場面から構成されている。

被告書籍(一)を原告冊子一(一)とを対比すると、場面設定、話の展開、会話の内容は、ほぼ同一であり、前者は後者を翻案したものと解される。

(3)  被告書籍(二)は、生徒たちが、自分たちが普通にコピーをするのは、私的使用だからよく、授業で先生が新聞記事をコピーして配るのは、授業で使うからよいという会話をしている場面から構成されている。

被告書籍(二)と原告冊子一(二)とを対比すると、会話の流れ及びその内容は、ほぼ同一であり、前者は後者を翻案したものと解される。

(4)  被告書籍(三)は、生徒たちが、学校祭での出し物について話し合い、カラオケテープを利用したのど自慢大会の案が出て、カラオケボックスで録音したテープを使用したり、チェッカーズのレコードをコピーして使用するのはどうかという話をする場面から構成されている。

被告書籍(三)と原告冊子一(三)とを対比すると、話の展開及び会話の内容は、ほぼ同一であり、前者は後者を翻案したものと解される。

(5)  被告書籍(五)は、知的財産権に含まれる権利の関係を、樹木の枝状に現した説明図である。

被告書籍(五)と原告冊子一(五)中の図とを対比すると、「その他」と分類された枝が中央又は端に配されている点、「音楽界」「美術界」等の記載が付加されている点において異なるが、それ以外の点は、すべて同一であり、前者は後者を複製したものと解される。

(6)  被告書籍(六)は、生徒たちがデジタル式のテープやディスクには、値段に著作権料が含まれているという話をしている場面、そこへ先生が来て、音楽の著作権や著作隣接権、著作者人格権について説明をする場面、ものマネでなく、新しいものを生み出せばよいとの話をする場面から構成されている。被告書籍(六)と原告冊子一(六)とを対比すると、話の展開及び会話の内容は、ほぼ同じであり、前者は後者を翻案したものと解される。

(7)  被告書籍(七)は、生徒の一人の叔母が、海外旅行で買った偽ブランド品を没収されたという話をする場面、生徒たちがブランド品にどのような権利があるのかを調べ、意匠権と商標権の違いについて話をする場面から構成されている。被告書籍(七)と原告冊子一(七)とを対比すると、話の展開及び会話の内容は、ほぼ同一であり、前者は後者を翻案したものと解される。

2  以上のとおり、被告書籍(一)ないし(三)及び(五)ないし(七)は、原告冊子一の該当部分を複製ないし翻案したものであり、被告らが被告書籍を発行することは、原告の原告冊子一に係る複製権、翻案権を侵害する(なお、被告豊澤は、被告書籍の執筆に当たり、原告冊子一又は二に依拠しなかった旨主張するが、右主張は採用できない。)。

これに対し、被告書籍(四)は、原告冊子一(四)や原告冊子二(四)と話の展開が異なることから、その翻案とは認められず、また、原告冊子一(八)及び原告冊子二(八)は、問合せ先一覧として知的財産権関係の官庁や団体を並べたものにすぎず、原告の独自の個性を発揮したものということはできず、著作物性を肯定することはできない。

3  被告書籍(一)ないし(三)及び(五)ないし(七)は、原告冊子一を複製、翻案するに当たり、会話の内容等を改変している部分があり、特に、被告書籍(七)においては、「そういうこと。つまり著作権は没収する法律でもあるわけだね」と、読者に、偽ブランド品が著作権法により没収されるかのような誤解を与える会話に改変されている。したがって、被告らの行為は、原告冊子一について原告が有する同一性保持権を侵害する。

二  争点2(被告会社の故意、過失)について

被告会社は、出版社として、書籍を出版する際には、第三者の著作権等を侵害していないか調査検討すべき義務があるところ、原告冊子一の存在が推測されるにもかかわらず(甲三)、何ら調査検討をせずに、被告書籍を発行したのであるから、被告会社には、原告の著作権及び同一性保持権を侵害したことについて過失があったと認められる。なお、被告会社が、著作権侵害はない旨の被告豊澤の回答を信用したとしても、右認定を覆すには足らない。

三  争点3(損害額)について

被告らは、原告の著作権及び同一性保持権を侵害し、これについては、少なくとも過失があったと認められることから、被告らには原告が被った損害を賠償する義務がある。

被告書籍の販売価格は一三〇〇円であり、被告会社は、被告書籍を合計二〇三一冊販売したと認められる(丙一、二)。著作権使用料は販売価格の一〇パーセントが相当であると考えられるところ、被告書籍全体中、侵害部分の占める割合等を考慮すると、原告の著作権が侵害されたことにより、原告が被った損害としては、一〇万円が相当である。右判断と異なる原告の主張は採用できない。

また、被告らが原告の有する同一性保持権を侵害したことにより、原告の社会的信用が毀損されたと認めることができる。そして、原告は、消費者教育の総合的かつ効果的な推進を支援することを目的とする公益的な財団法人であること、被告豊澤は、被告書籍は原告冊子一の内容を解説する意図の下で発行したものと自ら説明していること(甲三、九)、及び被告書籍が原告冊子一を改変した内容、程度は前記のとおりであること等を総合考慮すると、右侵害により原告が被った損害を金銭に評価すると四〇万円が相当である。

四  争点4(謝罪広告)について

被告書籍の販売数、被告書籍中の侵害部分の占める割合等すべての事情を考慮すると、原告の信用を回復するため、損害賠償に加えて、さらに、被告らに謝罪広告をさせる必要性があるとは認められない。

五  よって、その余の点について判断するまでもなく、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 石村智)

謝罪広告目録

一 体裁

スペース 二段抜き左右一〇センチメートル

使用文字 「謝罪広告」との見出し 二〇級ゴシック

本文及び日付 一六級明朝体

被告ら名及び宛名の原告名 一八級明朝体

二 広告文(但し、日付は広告掲載の日とする。)

謝罪広告

私豊澤豊雄が執筆し、弊社株式会社騎虎書房が出版しました書籍「中学生にもわかる著作権」は、貴財団法人が著作された「大事にしようあなたの創意」及び「きみが創りきみが守る」の各冊子の内容のほとんどを、無断で、使用しまた改変して記載しました。

これにより、貴財団法人の著作権および著作者人格権を侵害し、多大な御迷惑をおかけしましたことをここにお詫び致します。

平成  年  月  日

豊澤豊雄

株式会社騎虎書房

財団法人 消費者教育支援センター 御中

対照目録

(一)~(八)

但し、Aは原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」

Bは原告著作冊子「きみが創りきみが守る」

Cは被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」

(一) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二頁)

<省略>

(一) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」三頁)

<省略>

(一) A-3(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」四頁)

<省略>

(一) A-4(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」五頁)

<省略>

(一) A-5(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二五頁)

<省略>

(一) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」四頁)

<省略>

(一) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」五頁)

<省略>

(一) B-3(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」六頁)

<省略>

(一) B-4(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」七頁)

<省略>

(一) B-5(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二七頁)

<省略>

(一) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」一六頁~一九頁)

(1) キャラクターの無断コピーは違法?

ここは、とある中学校。学校祭のたて看板が立って、その行事を生徒に知らせている。その看板を数人の生徒がながめて、何やらさわいでいた。

すると、そのうちの一人、春子が、

「まあ、ひどい、ここに描かれているパンダの絵、私が美術の時間に描いたのとそっくりよ。私のをまねたのよ!」

と叫んだ。春子の同級生の夏江も、

「たしかに春子の描いた絵と同じだわ。これ、著作権の侵害よ」

と言った。秋男が頭をかきながら、

「著作権ってなんだよ」と聞いた。すると夏江は得意になって、

「知的所有権の一つよ。人の創作したものを、かってに使ってはいけないのよ」

「でも、このパンダの絵は春子は作ったものだから、著作権はないんじゃないか?」

「そうだ、そうだ。生徒が作ったものだから仕方ないんだよ」

周りにいた何人かの同級生は、夏江の意見に反論する。しかし夏江は、

「そうじゃないわよ。大人が作っても、子どもが作っても、それが創作だったら届けなしでも著作権はあるのよ」

と主張する。

すると冬二が、

「この間、新聞に出ていたけれど、パソコンのソフトをかってにコピーして、それをパソコン通信で販売して大儲けをしていた人がいるんだってさ。元手はかかっていないし、コピーなんて誰でもできるし、それが高く売れるから当然儲かるよね。ところが、それがバレて、すぐ逮捕されたって話しだよ」

「買うほうも悪いわよね」と夏江。

「でもソフトは高いからさ。安ければ買いたくなるし、それに文明の普及にいいんじゃないかと思うよ」

「さあ。どうかな……」と皆が首をかしげる。

「コピーして売るのが、どうしていけないのかな? 先方のものがなくなるわけじゃないんだし」

「そうだ、そうだ。楽譜だって、やっているじゃないか? 楽譜を買うのは高いから、一つ買ってそれをコピーして、みんなに配ってやっているじゃないか。遊びのために、ソフトをコピーして使って楽しんでもいいんじゃないかと思うよ」

と秋男が言った。

そこへ先生がやってきた。生徒が言い合っているのを見た先生は、何について議論しているのかをじっくりと聞いた。

そして皆の意見を聞き終わった後で、次のような話をした。

「みんなの意見は一応正しいように思えるね。しかし、例えばよい曲をつくるには、長い日時と苦労のつみ重ねが必要だ。その曲ができたら、今度はそれを出版社がたくさんの資金を出し、印刷して全国に売り出している。それをみんながコピーですまして、楽譜を買わなかったら、作曲家や作詞家、それに楽譜を出した出版社はどうなるだろう。きっと苦労したのにその苦労はむくわれないし、出版社もまた多額の資金を出して作ったのに利益が出ないから大損してしまう。すると、もう次から作曲家などがよい曲を作ったり、出版社が本を印刷して本屋に送ったりしなくなる。そうしたらよい曲が出なくなるから、文化は進まなくなってしまう。

でも、苦労して作った人がむくわれると、次もまたよい曲を作ろうとする。そういう意欲がわくようにするには、『コピーしてはいけない』とういう法律を作ろう……ということで生まれたのが著作権だよ。文化を進めるためには、コピーしてはいけないんだよ」

それでみんなは納得した。そして先生はすぐに、

「そういうことだから、春子のパンダの絵をだまって使うのはよくないね。委員会にいって、あらためて春子の了解を得て、春子の作品であることを記してもらうことにする。本当は著作権料を出すべきだけど、学校祭だからそれは無料とういことにしてもらおう。それでいいかね春子」

「OK、それですっきりしました」

(二) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一七頁)

<省略>

(二) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一八頁)

<省略>

(二) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一九頁)

<省略>

(二) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二〇頁)

<省略>

(二) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」三四頁)

(2) コピーしていいものは何か?

春子たちが教室に戻ると、文化祭の絵だけでなく他のコピーについても疑問が出始めていた。早速、夏江と冬二がコピーについて話をし始めた。

「ところでコピーはいけないというけれど、私的に使用する場合は無断でコピーしていいのかしら……」

「おれたちが普通にとっているコピーは、私的使用だからいいんだろう」

「当然だよ」

夏江と冬二の間に秋男が割り込んだ。

「じゃあ授業で先生が新聞記事をコピーして配っているけれど、あれは私的でないから、いけないのかなあ」

「授業で使うならいいんだろう」と冬二。

「もしいけないときは、日本複写機センターへ連絡すればいいらしいけれど……」

「でも、本当に問題がないのかしら……」

夏江が不安な表情を見せた。

(三) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」七頁)

<省略>

(三) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」八頁)

<省略>

(三) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」九頁)

<省略>

(三) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一〇頁)

<省略>

(三) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」四〇頁、四一頁)

権利期間はいつまでなのか?

春子たちは、学校祭で出す出し物について色々とアイデアを出し合っていた。

「ところで、のど自慢大会をしてはどうかな」

秋男が提案した。

「それはいいや。一曲につきいくらと決めて、のど自慢大会をやろう」

「でもカラオケテープ、誰かもってるの?」と春子が聞くと、

「もっていない」

という答えが全員から返ってきた。

「それならカラオケボックスに行って、テープにとってくればいいんだよ」

と秋男が言った。

「そんなことしていいの、著作権の侵害にならないかしら」

夏江が不安そうに聞いた。

「昔の古い曲ならいいんじゃないかな。たぶん著作権なくなっているよ」

「ぼくのところにチェッカーズのレコードがあるよ」

「チェカーズも解散しているよ。それにもう古いからいいんじゃない」

それを聞いた春子が、

「でも無断でコピーするのはだめだと思うわ。解散しても、誰かがその権利をゆずり受けているかもしれないし……。解散したって権利は残っているんじゃないかしら?」

春子の言葉にみんな再び考え始めた。

(四) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」九頁)

<省略>

(四) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一〇頁)

<省略>

(四) A-3(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一一頁)

<省略>

(四) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一一頁)

<省略>

(四) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一二頁)

<省略>

(四) B-3(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一三頁)

<省略>

(四) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」四八頁)

(1) 著作権に準じた権利とは

歌詞や曲を作った作者は、著作権をもっている。しかしその歌詞や曲を歌った歌手にも、権利がある。これを『著作隣接権』という。この権利について、秋男と冬二が次のような話をしていた。

「今度、近所の会館にタレントが来るらしいけど、それをビデオにとって売れないかな」

「タレントは、歌詞を作ったり曲を作っているわけではないから、著作権はもっていないはずだから、問題ないと思うよ」

「だけど、このあいだキムタクのコンサートを無断でビデオにとって販売していたら、懲役一年とかになったという記事があったよ」

「なんで作った人じゃないものにまで権利があるんだろう」

「パソコンのソフトだって高価だから、みんなコピーして使っているじゃないか」

「そうだよ、それにコピー屋とか、貸しビデオ店とか、レストランだって、みんなやっているじゃないか」

「でも、実際はどうなんだろうか?」

(五) A(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一二頁)

<省略>

(五) B(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一四頁)

<省略>

(五) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」五一頁)

<省略>

(六) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二〇頁)

<省略>

(六) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二一頁)

<省略>

(六) A-3(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二二頁)

<省略>

(六) A-4(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二三頁)

<省略>

(六) A-5(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二四頁)

<省略>

(六) A-6(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」二五頁)

<省略>

(六) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二二頁)

<省略>

(六) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二三頁)

<省略>

(六) B-3(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二四頁)

<省略>

(六) B-4(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二五頁)

<省略>

(六) B-5(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二六頁)

<省略>

(六) B-6(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」二七頁)

<省略>

(六) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」五二頁~五四頁)

(2) 勝手に変えてはいけない権利とは

無断コピーをしていると、著作権者だけでなくたくさんの権利者、たとえば歌手、俳優、演出家、振り付け、など著作隣接権者からも文句をいわれる。

また、著作権には著作者人格権というものもあるから、それを尊重しなくてはならないことも教えている。これについて秋男と冬二が次のような話をしていた。

「私的使用でも、デジタル方式のテープやディスクなんかは、ちゃんと機械などの値段に、著作権料を含めて、権利者を守っているんだろう?」

「家庭内でアナログでコピーしたのはいいんだよね」

「デジタルは録音の質がいいが、アナログのは音が悪いって、文句が出たみたいだよ」

「誰が文句を言ったんだい」と冬二が秋男に聞いた。

「作曲者とか、歌手とか、演奏家とか、レコード会社とか……」

と秋男はあいまいな回答しかできない。

そこへ先生が来て、

「難しいこと調べたんだね。では、音楽の著作権について話そうか」

といって、その権利を教えてくれた。

「作曲者が亡くなって五〇年たっても、レコード会社には、権利があるから無断コピーはできないんですか?」

と冬二が先生に聞いた。

「そうだよ。作曲家が亡くなっても、そのあとから演奏した演奏家や、それをつくったレコード会社には権利が残っているんだよ。それなどの権利を『著作隣接権』というんだ。

ついでに注意しておくが、著作権料を支払ったからといって、その作品を無断で変えてはいけないのだよ。作者には『著作者人格権』というのがあって、変更してかえ歌をつくったりするときは、許可をうけなくてはいけないということだ」

「難しい法律で、手も足もでないみたい」

「そんなことはない。今までやっているとおりでいいのだし、チョット手続きをすればまねてもいいんだから」

「そうだよ。勉強だって、マネだからね」と先生は秋男と冬二に言った。

「先生が以前いっていた『マネから、自分のくふうで新しいものを生み出せ。マネだけではだめだよ』っていうことですね」

「そうだ、ぼくらも他人の権利は大切にするが、自分も人々のためになるような、著作権を作り出すように心がけようね」

(七) A-1(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一三頁)

<省略>

(七) A-2(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一四頁)

<省略>

(七) A-3(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一五頁)

<省略>

(七) A-4(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」一六頁)

<省略>

(七) B-1(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一五頁)

<省略>

(七) B-2(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一六頁)

<省略>

(七) B-3(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一七頁)

<省略>

(七) B-4(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」一八頁)

<省略>

(七) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」六〇頁、六一頁)

みやげの品が没収された!?

春子と夏江が、著作権について色々な話をしている時に、夏江が思い出したようにブランド品についてはどうなのかという話題になった。

「叔母さんがね、おみやげに海外旅行から買ってきたブランドもののハンドバックやお財布を、入国のとき、ニセモノだといってぜんぶ没収されたんだって」

「それはヒドイ、ニセ物だってお金は支払っているのに……ナゼなのかしら?」

「もしかしてブランド品にも権利はあるのかしら」

「そんなことなら簡単だよ。ちょっと調べてみたから」

と冬二が著作権のリストを作って、それをみんなの前で見せた。

「これによると意匠とか商標権のことだって書いてある」

「意匠権と商標権は、どこがちがうの?」

と春子がたずねた。

「意匠とはデザインのこと、商標とはマークのこと、つまりブランドのことだよ」

「ということは、私の叔母さんが買ってきたニセブランド品は、商標権を侵害している商品だから、輸入のとき没収されてしまったわけね」

「そういうこと。つまり著作権は没収する法律でもあるわけだね」

(八) A(原告著作冊子「大事にしようあなたの創意」三四頁)

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(八) B(原告著作冊子「きみが創りきみが守る」三四頁)

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(八) C(被告豊澤著書「中学生にもわかる著作権」一七七頁~一八〇頁)

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